テレビはインターネットがなぜ嫌いなのか

スゴ本きました。長文失礼します。知らなかったことだらけでしたので。

テレビはインターネットがなぜ嫌いなのか
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吉野 次郎
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5 わかりやすい良書です
3 既得権の問題ですね
4 テレビ局員が絶対に話さないテレビの常識

テレビ局、キー局、系列局、制作会社、NHK、日本政府、総務省、米国テレビ事情、ハリウッド。このあたりのビジネスの事情を知らずにテレビとインターネットの融合は語るのは、無知すぎることだと痛感しました。

そしてテレビがインターネットを嫌いな理由以上に、テレビ局がテレビを好きな理由がよくわかりました。

以下に内容まとめです。

目次

権利処理のウソ

  • 「番組をインターネットで配信するには著作権処理が大変だから、できない」は詭弁。
  • 番組をDVDとして売り出すのと、インターネットで配信するのに必要な許可は変わらない。
  • 単純に「儲からないから」というだけ。

最強の番組流通システム「系列」

  • キー局と呼ばれるテレビ局は5社。その他は地方局。
  • 日本テレビ配下の地方局は29社。TBSは27社。フジテレビも27社。テレビ朝日は25社。テレビ東京は5社。
  • 地方局はキー局からもらう電波料に完全に依存している。
  • 「地方局の経営ほど楽な商売は、この世に存在しない」
  • 地方局は放送時間の9割以上をキー局の番組にあてている。
  • 地方局とキー局の法律上の違いはない。地方局はいつでも独立できる。キー局が地方局に資本参加できるのは20%に限られている。
  • 地方局は自社で制作した番組を自由に流していい。
  • 大阪のテレビ局は、お笑いや阪神タイガースなどのコンテンツ力もあって、独自放送が平均3割。
  • 地方局はキー局に番組を持ち込むこともできる。
  • 「世界丸ごとHowマッチ」も、大阪のテレビ局発の番組だった。
  • キー局は地方局の番組の放送をじょじょに閉め出して現在に至った。

地方局はネットが怖い

  • 地方局は制作力が無い。
  • キー局はリスクヘッジのためにネット放送も限定的にやってみている。
  • キー局がネット配信すると、地方局の存在意義が無くなる。
  • 地方局の中から「ネットの売り上げの分け前を」との主張もあるとか...。
  • キー局は地方局がだんだん疎ましい存在になってきている。

NHKはネットに夢中

  • NHKは成長したい。
  • NHKは視聴料収入による成長の見込みはなくなった。
  • 視聴料不払い騒動で、パンドラの箱は開かれた。
  • 広告は販売できないので、ネットでの有料放送が有力。
  • NHKアーカイブスはプロパガンダ。コンテンツの死蔵を見せつけ、世論を巻き起こすための布石。ある程度成功している。
  • 視聴料不払いの伸びは止まったが、またいつ伸びるかわからないので、ネットでリスクヘッジしたい。
  • 視聴料は見なくても徴収される。見たい人だけ対価を支払うネット有料放送は、納得もされやすい。

民放テレビ局が望む「二元体制」

  • 日本の放送市場の構造を理解する上で、欠かせないテレビ業界用語。
  • 民放が娯楽番組など、20~34歳向けの「低俗な」番組を担当し、NHKはそれ以外をターゲットにした「まじめな」番組を担当する体制。
  • 民放の娯楽番組放送率は38%。NHKは15%。段違い。
  • 娯楽番組のほうが視聴率をとれるので、民放はまじめな番組は放送したくない。
  • 民放が低俗一辺倒の娯楽番組を流していられるのは、NHKがまじめな番組を流しているから。チャンネルを変えればよい。
  • 民放テレビ局はNHKのネット進出を阻害しようとしている。
  • だが、その理由には筋が通っていない。
  • 共存関係が崩れるよ!→NHKが広告事業を展開するとは一言もいっていない
  • ネットに夢中になりすぎて公共放送の役割を果たさなくなるよ!→受信料という莫大な収入をないがしろにする理由がない
  • NHKがネットに進出したらネットの競争環境が歪むよ!→ネット企業からはNHKのネット進出を望む声ばかりが上がっている

家電業界の野望

  • テレビに2画面機能をつけたとき、テレビ局側から「画面が汚れる」と批判された。
  • そもそも家電メーカーはテレビ局の広告事業を支えるためにテレビを販売していない。
  • デジタル放送対応テレビで、テレビの基本スペックは飛躍的に上がった。ソフトさえ導入すればいつでもネットに対応できる。
  • 昔のネット対応テレビが失敗したのは、回線品質が悪かったから。今はブロードバンドが普及したので、可能性がある。
  • ネット対応テレビは、OSをマイクロソフトに牛耳られている状況の打開策にもなる。

芸能界とテレビの蜜月に陰り

  • 映画からテレビに視聴者が移行したのは「スター」がテレビに移ったからだった。
  • 映画業界はスターの移動を阻止しようと、5社協定を結び、スターの囲い込みをかけた。だが次第に協定は有名無実と化した。
  • 芸能人がインターネットに移れば、テレビがインターネットに負ける可能性は十分ある。
  • ジャニーズは囲い込みの典型的な例。
  • 吉本はネットに好意的。
  • 少しづつネットに登場する芸能人のレベルが上がってきている。俳優なら昔は脇役級だったが、今ではそれなりに。

制作会社の下克上

  • 制作会社の数は約400社。
  • キー局の制作現場のスタッフの7割は制作会社から派遣された人材。
  • 下請けの制作会社が人気番組を作っていることも珍しくない。
  • 制作会社はテレビ以外にも番組を出したい。
  • テレビ局は、制作会社が制作した番組の著作権をテレビ局に帰属させている。そのほとんど。
  • テレビ局主導の番組なら制作会社も納得するが、制作会社主導が作った番組も、その契約になっている。制作会社としては納得がいかない。
  • テレビマンユニオンという制作会社があり、人気番組を多く制作している。
  • テレビマンユニオンは、制作の実体的に著作権が帰属すべきところでしないことがあれば、徹底的に抵抗している。場合によっては制作を断ることもある。
  • 米国のテレビ局はつい最近まで番組の著作権を所有することが、法律上できなかった。ハリウッド保護政策。
  • 米国の制作会社(ハリウッド)はとてつもない力をもっている。
  • ハリウッドの番組制作費は半端じゃない。
  • ハリウッドの人気ドラマシリーズは1話あたり2億円が相場。大ヒット作は6億円。対して、日本のキー局が1日につぎこむ番組制作費は約3億円。ハリウッドの人気ドラマが面白いわけである。
  • 日本のテレビ局は、制作能力の向上を怠らず、法律上の縛りもなかったので、制作会社に対抗できた。
  • 制作会社はネットに注目している。テレビ依存から脱却したい。

国策としての制作会社の後押し

  • 日本のテレビ局は、制作会社に作らせた番組で積極的に商売しようとしない。
  • 価値があるものを死蔵させてしまうことは、国際的に非常に勿体ない。
  • 経産省はこの状況を改革したい。
  • テレビ局は経産省の管轄外なので遠慮がない。ライバルは総務省。

テレビ局を批判する前に、テレビ局とビジネスをする前に、テレビ局に対抗するために、この本は読むべきだと思います。気になった方は是非。

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