プロにタダで依頼してもいい(追記:ただしリスペクトは必要)

追記:このエントリの続きとして「プロに必要なのはリスペクトだった」を書きました。あわせてどうぞ。

ネットでは頻繁に「プロに無償で依頼するなんて非常識だ」という意見を見かけます。正論だとは思いますが、相手がプロであっても、お金を払わなくてもいい、むしろ払わないほうがお互いのためになる場合があります。

それは、依頼相手とお金のやりとり無しに繋がってる場合です。いわゆる、恋人や友だちのことで、橘玲(たちばなあきら)氏の言葉を借りると、お互いが「愛情空間」や「友情空間」の中にいる場合です。そして、友だちよりも広い関係を「政治空間」と呼び、お金のやりとりによる繋がりは「貨幣空間」といいます。 

純粋な恋人や仲の良い友だちに何かをお願いするときに、いちいち現金の報酬を提示していたらどうなるでしょうか。想像に易く、その関係は壊れてしまうでしょう。依頼相手が生業(プロ)としている分野であってもです。(だからといって全ての依頼が無償になるわけではありません)

「恋人や友だちは例外だ」と思われるかもしれません。しかし、お金のやり取りをせずに繋がっているであれば、この限りではありません。学校や町内会といったコミュニティの中でお願いごとが無償でやりとりされる光景は、よく見かけるものです。しかしまた、遠い政治関係だからこそ、意見の相違が起きやすいコミュニティでもあります。

よくネットで話題になるのは行政機関による無償の依頼ですが、あれは担当者が極端に政治空間の中に生きているからか、政治空間の中にいる人たちや、政治空間への参加希望者に向けた募集なのかもしれません。(政治空間の住人でも、相手の利益無しに何かを依頼することはありません)

そして、ことさらに無償の依頼を非常識だと主張する人たちは、極端に貨幣空間の住人なのかもしれません。政治空間的な関係は例外中の例外で、すべての価値はお金で交換するべきであると考える、貨幣主義者とも言えそうです。

「友達だからといってタダで依頼していいわけがない」のは正しいのですが、「友達だからこそ、報酬を提示して依頼してはいけないと考えているから、タダでお願いしている」のもまた、正しいのです。

両者の違いは、交換しようとしている(すべきと考えている)ものが関係性なのか、貨幣なのかという点です。通貨の違いから起きる衝突なので避けようが無いことですが、あまりに意見が偏っているように見えたので、釣りっぽいタイトルで書いた次第です。

なお「政治空間」「貨幣空間」の言葉は「お金はなぜ“汚い”のか 橘玲 公式サイト」から引用させていただきました。

追記:このエントリの続きとして「プロに必要なのはリスペクトだった」を書きました。あわせてどうぞ。

コメント / トラックバック

コメント / トラックバック 4 件

  1. 甕星亭主人 より:

     友人或は仲間に頼む際でも、心理的な貸借関係が発生して居る事が理解出来て無い。 一種奢りなのだから、否払いますよ然うですか済みませんね的な、或は手持ちが無いので悪いけど的な。 少なくとも只仕事の場合は依頼側の懇情姿勢が必須じゃ無いかな。
     思い出すのは、とり・みきさんが子供のPTA仕事でカット委嘱を受けるのが困るって話で、PTAの労務分担仕事と違って、技術提供だからね。 まあ、其れでも波風立てずに受けたらしいけど、家具屋行ってお宅の家具提供して呉れってのと同じだと力説してたっけ。
     却って金を受け取ると気不味く成る、ってのは、専業技術や提供市販価が相応にする物では無い時にのみ適用出来る話で。 相手の鷹揚さを前提に半ば強いる形は何うかな?

  2. 通りすがり より:

    貨幣主義者という定義が十分説明されてない気がしますが、お金で換算するべき考え方が貨幣主義者という言い方には強い嫌悪感を受けます。
    お金以外考えられないという考え方の人は守銭奴という呼び名がベストかと。

    無償は有りません。有り得ません。
    では貴方はいままで無償で製品を売ったことはあるのですか?無いのなら何故やらないんですか?
    私たちの懸念は安くて当然という価格の叩き屋が蔓延している現在にあって、無償を推奨する発言、認める発言が出ることで更に勘違い君たちが増えることです。
    貴方が無報酬を推進するなら、ここにあるアフィリエイト広告を今日から削除してください。

  3. 別の通りすがり より:

    プロだから問題なのであって、それを生業としている人に「無償でやれ」はどう考えても非常識であり、友達であればなおさら、その人の仕事を軽視する友達はどうかと思いますよ。

    学校や町内会を例に出していますが、基本的には「あの人詳しいから頼んでみよう」程度の事で、人より詳しい程度のアマチュアだから許される事であり、プロであればお金が発生すると考えるのが普通だと思います。

    日頃から世話になっているとか、借りがあるとかの間柄であればそのお返しとして無償でもよいと思いますが、仲のよい友達でも何か頼むときには「あとで穴埋めするから」とかそういうことは言いませんか?
    基本的には何でもギブアンドテイクであり(ちゃんと成り立っているかは別として)、見返りのない場合は提供側から言い出した「好意」の場合のみだと思います。

  4. ヤマ より:

    そもそも人に何かをしてもらう時に、その対価を払わないというのはおかしい。
    それがお金なのか、愛情なのか、リスペクトなのかに関わらず。

    サービスの提供側とサービスの需給側とで、交換された価値にズレがあるとしたら、それこそ不公平ですよね。その不公平さをなくすための行為が相手に報酬を伝える行為なだけだと思いますが。それを卑しいとか言われると、なんだかなぁって思います。